みとるみおくる

5200名の方をお送りしてきた元納棺師のブログ

どうして納棺師は偏見の目で見られるのか

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納棺師って差別的な職業なの?と思ったキッカケは何だったでしょうか?
納棺師の面接に行った時、偏見のある職業けど家族は賛成してくれいるかと聞かれたからですか?
家族に納棺師になりたいと話したら、そんな仕事しか出来ないのかと言われたからでしょうか?
それとも、映画”おくりびと”で「穢らわしい(けがらわしい)」と言っているシーンを観たからでしょうか?
実際、差別や偏見はあります。
それを知った上で納棺師になろうか、やめようておこうかと迷われている人向けの記事です。
最初に断っておきますが、私は納棺師は素晴らしい職業であると思っています。今は納棺師から退きましたが、生まれ変わってもまた納棺師になりたい、たとえ差別や偏見があろうともという立ち位置です。
どちらかの選択に誘導することは意図から外れますので事実、現実だけを伝えようと思いますのでご理解ください。

「こんな仕事しが出来ないのか」

人の嫌がる死体を扱う仕事を、穢多(えた)といわれる身分制度の階級が低い人達がしていた時代があったそうです。その名残から、死を扱う仕事は身分が低い、身分が低いから死を扱う仕事しかできない、一段下に見られるという思考につながっているのだと思います。
他人からどう見られるか、どう思われるかを気にする人からすると、あえてこの道に進まなくてもと考えるのも理解できます。
職場の人で縁談が破棄になった人がいました。   自分だけでなく、家族にまで迷惑をかけてしまうこともあります。
面接で納棺師になることを家族が賛成しているかと聞かれるのもこういう理由があってのことだと知っておいてください。
社員のことを考えている会社なら必ず聞くと思います。
余談ですが、穢多(えた)とは穢(けがれ)が多いと書くことからも、身分がどれだけ低いとされていたのかがわかりますよね。

それからもう一つは、職業で人を見る人がいること。
例えば、同じように死を扱う仕事であっても医者や検視官ならこんな言われ方はしないはずです。
病気を治すのが仕事だから、犯罪性があるかどうか捜査するのが仕事だからなんてのは後からつけた理由だと私は思っています。
要するに、その職業につく難易度が高いほど学力能力が優れている、経済力があると判断する人からすると納棺師は底辺の仕事なのです。

「穢らわしい」(けがらわしい)

死体を怖い、汚いと思う人からすれば、死体を触った手で触れられたくない、一緒にいたくないと思うのが普通でしょう。
それよりも根深いのは「穢れ」(けがれ)という思想です。
穢れってどういうことなんだ?と聞いても、言った本人でさえ説明できないはずです。私にもわかりません。
誰もが持っている潜在意識みたいなものなのかなって感じです。
お清め、お祓い(おはらい)、禊(みそぎ)、これらはよく耳にしますが、穢れ(けがれ)を払う行為(と言われています)です。
信じる信じないに関わらず、穢れ(けがれ)は有るより無い方がいいよね位アバウトなものだと思います。
葬儀のあと清め塩をもらって帰り、玄関に入る前に体に塩をふりかけると、穢れ(けがれ)を家に持ち込まないと言われたことないですか?
そんな話を聞いたら、しとこっかな!?と思いませんか?
葬儀場で配られる塩なんて工業用の塩なんですよ、それでもやりますよね?
穢れ(けがれ)は、目にも見えない、信憑性もないものなのに、死=不吉というイメーシを与えてしまう。いや、有るか無いかわからないからこそ意識に刷り込まれるのかもしれません。

ご納棺に伺った先で、車を停める位置を尋ねるために一旦空き地に停めたところ、葬儀の関係の車ですよね、不吉だからここに停めないでと言われたことがあります。
湯灌(亡くなられた方を洗う)のあとの水はここに捨てないでください、植えてあるものが枯れてしまうとも言われました。(お湯はすべて持ち帰る仕組みになっています)
納棺師さんが帰ったあとは塩まいたほうが良いのですか?と聞かれたこともあります。
葬儀場や火葬場の建設反対の看板を見かけたことないですか?理由は色々あるでしょうが穢れ(けがれ)意識がないとは言えないと思います。
書きだしたらキリがありません、珍しいことでもありません。

人格を否定されるわけではない

納棺師は感謝される仕事、尊い仕事だということに間違いはありません。
そして差別、偏見を受けようともその人の内面や仕事ぶりをみて正当に評価されていると感じています。
だから私は納棺師のことをクソミソに言ってた人が亡くなられたとしても、その方が穏やかに旅立っていただけるようお手伝いします。
納棺師になるか、ならないかは自分で決めることです。
もし反対している人を説得するなら、納棺師という職業を理解してもらうのではなく、あなた自身の人間性を評価してもらうことが大事だと思います。