みとるみおくる

5200名の方をお送りしてきた元納棺師のブログ

納棺師は長く続けられる仕事かどうか

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納棺師は向き、不向きが見事に分かれる職業でして、向いていない人はすぐに辞めていきます。
離職率が高いというこは向かない人のほうが多いと言えるのかもしれません。 向いている人にはもうこの仕事以外考えられない、生まれ変わってもこの仕事がしたいと思わせてしまう程の魅力的な職業でもあります。
では向いているからと言って定年まで続けられるかというとNO。
私も出来ることなら定年まで働きたかったけど、どんな情熱をもってしても続けられなかった。 だからこそ、いずれ転職を考える時期が来ますよということを知っておいてほしくてこの記事を書いています。

腰、首への負担が大きい

故人様の着替え、化粧、手当てなど正座をしての前かがみ姿勢

正座をして、お腹をきゅっと引っ込め背中が丸まらないように気をつけながら前かがみになる。
試しにやってみてください、結構キツイと思います。
この姿勢のまま、着替えや化粧をします。
当たり前ですが時間が長くなればなるほど辛い。腰痛、首のコリはその日のうちに現れます。

湯灌の機材(故人様を洗う簡易浴槽など)の搬入、搬出

機材類は軽量化され女性でも一人で運ぶことができます。また原則二人で運ぶことになっていますのでだいぶ楽にはなりました。
とは言っても、物にぶつけないように注意しながら、時には狭いスペースを、たまには坂道もあったりなんかして、それでも二人で息を合わせ見栄えよく運ぶ。
慣れればどうってことないのですが、年月とともに腰、首への負担が症状となって現れます。

故人様の移動

湯灌(故人様を洗う)の場合ですと、布団の上から簡易浴槽まで、簡易浴槽から布団まで、布団から棺へ納めるまで、これを二人で行います。
布団から棺への移動(納棺)の際は身内の方にお手伝い頂きながらになりますが、立会の無い場合や高齢の方しかいらっしゃらない場合は二人での移動になります。
丁寧に移動するといってもわかり辛いかもしれませんね、額に乗せたみかんが落ちない位です。
コツさえ習得すれば、女性二人だと80Kg、男性女性の二人組だと100Kgまでの故人様を移動できますが、かなりの負担です。
件数的には多くありませんが、2階から1階への移動なんてこともあります。
どちらにせよ慣れればどうってことないのですが、間違いなく体全体に負担がかかっています。

長時間の運転

移動距離は日によって差が大きいですが、平均150Kmでしょうか。どれだけ配車の担当がうまく調整してくれても300kmという日もあります。
運転、仕事、運転、仕事、運転、仕事、運転、ずぅっ~と腰に負担がかかりっぱなし。
目もシカシカしてきます、説明するまでもありませんね。

給料UPは微々たるもの

経験を積んで、知識や技量があがっても基本給はほぼ上がりません。
手当という名目のものが、チョッピリ上がるだけ。
主任、マネージャーという役職はありますが、これまたチョビット上がるだけ。事務作業が増えて、現場にでる回数が減るので、あまり変わらないと思います。
どこかに所属している限り、納棺師は百葉一絡げなんです。
他社ですが、50歳以降は給料上がりません、ボーナスも半分なんてのも聞いたことがあります。
給料体系は入社前に確認しておいてください。

社内移動はほぼ不可能  、

私の場合は頚椎椎間板ヘルニアと診断され痛みと痺れ(しびれ)のため納棺師を続けることが出来なくなりました。
経理や配車係、後輩の指導、管理、雑役などへの移動も考えましたが給料がかなり減ります。
そもそも私のやりたい仕事はそれじゃないんだというのも大きかった。
それにね、営業所にはそんな仕事ないんです、本社にしかない。
体壊したら、はいさよなら、です。

いつまで続けられる仕事かという視点が大事

腰痛もちでコルセットや骨盤ベルトを手放せない人は若い納棺師にも多くいます。
いつ仕事ができなくなるかわからない不安を抱えています。
歳をとるたびに、そのリスクも上がる、集中力が長時間続かなくなる。
納棺師はやり甲斐重視の人が多いせいか、ある一定のレベル以上の仕事ができなくなると続けていくのが苦痛になってしまうんですよ。
仕事選びで納棺師を検討している人は内容だけでなく、いつまで続けられる仕事かも合わせて考えて欲しいと思います。

どうして納棺師は偏見の目で見られるのか

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納棺師って差別的な職業なの?と思ったキッカケは何だったでしょうか?
納棺師の面接に行った時、偏見のある職業けど家族は賛成してくれいるかと聞かれたからですか?
家族に納棺師になりたいと話したら、そんな仕事しか出来ないのかと言われたからでしょうか?
それとも、映画”おくりびと”で「穢らわしい(けがらわしい)」と言っているシーンを観たからでしょうか?
実際、差別や偏見はあります。
それを知った上で納棺師になろうか、やめようておこうかと迷われている人向けの記事です。
最初に断っておきますが、私は納棺師は素晴らしい職業であると思っています。今は納棺師から退きましたが、生まれ変わってもまた納棺師になりたい、たとえ差別や偏見があろうともという立ち位置です。
どちらかの選択に誘導することは意図から外れますので事実、現実だけを伝えようと思いますのでご理解ください。

「こんな仕事しが出来ないのか」

人の嫌がる死体を扱う仕事を、穢多(えた)といわれる身分制度の階級が低い人達がしていた時代があったそうです。その名残から、死を扱う仕事は身分が低い、身分が低いから死を扱う仕事しかできない、一段下に見られるという思考につながっているのだと思います。
他人からどう見られるか、どう思われるかを気にする人からすると、あえてこの道に進まなくてもと考えるのも理解できます。
職場の人で縁談が破棄になった人がいました。   自分だけでなく、家族にまで迷惑をかけてしまうこともあります。
面接で納棺師になることを家族が賛成しているかと聞かれるのもこういう理由があってのことだと知っておいてください。
社員のことを考えている会社なら必ず聞くと思います。
余談ですが、穢多(えた)とは穢(けがれ)が多いと書くことからも、身分がどれだけ低いとされていたのかがわかりますよね。

それからもう一つは、職業で人を見る人がいること。
例えば、同じように死を扱う仕事であっても医者や検視官ならこんな言われ方はしないはずです。
病気を治すのが仕事だから、犯罪性があるかどうか捜査するのが仕事だからなんてのは後からつけた理由だと私は思っています。
要するに、その職業につく難易度が高いほど学力能力が優れている、経済力があると判断する人からすると納棺師は底辺の仕事なのです。

「穢らわしい」(けがらわしい)

死体を怖い、汚いと思う人からすれば、死体を触った手で触れられたくない、一緒にいたくないと思うのが普通でしょう。
それよりも根深いのは「穢れ」(けがれ)という思想です。
穢れってどういうことなんだ?と聞いても、言った本人でさえ説明できないはずです。私にもわかりません。
誰もが持っている潜在意識みたいなものなのかなって感じです。
お清め、お祓い(おはらい)、禊(みそぎ)、これらはよく耳にしますが、穢れ(けがれ)を払う行為(と言われています)です。
信じる信じないに関わらず、穢れ(けがれ)は有るより無い方がいいよね位アバウトなものだと思います。
葬儀のあと清め塩をもらって帰り、玄関に入る前に体に塩をふりかけると、穢れ(けがれ)を家に持ち込まないと言われたことないですか?
そんな話を聞いたら、しとこっかな!?と思いませんか?
葬儀場で配られる塩なんて工業用の塩なんですよ、それでもやりますよね?
穢れ(けがれ)は、目にも見えない、信憑性もないものなのに、死=不吉というイメーシを与えてしまう。いや、有るか無いかわからないからこそ意識に刷り込まれるのかもしれません。

ご納棺に伺った先で、車を停める位置を尋ねるために一旦空き地に停めたところ、葬儀の関係の車ですよね、不吉だからここに停めないでと言われたことがあります。
湯灌(亡くなられた方を洗う)のあとの水はここに捨てないでください、植えてあるものが枯れてしまうとも言われました。(お湯はすべて持ち帰る仕組みになっています)
納棺師さんが帰ったあとは塩まいたほうが良いのですか?と聞かれたこともあります。
葬儀場や火葬場の建設反対の看板を見かけたことないですか?理由は色々あるでしょうが穢れ(けがれ)意識がないとは言えないと思います。
書きだしたらキリがありません、珍しいことでもありません。

人格を否定されるわけではない

納棺師は感謝される仕事、尊い仕事だということに間違いはありません。
そして差別、偏見を受けようともその人の内面や仕事ぶりをみて正当に評価されていると感じています。
だから私は納棺師のことをクソミソに言ってた人が亡くなられたとしても、その方が穏やかに旅立っていただけるようお手伝いします。
納棺師になるか、ならないかは自分で決めることです。
もし反対している人を説得するなら、納棺師という職業を理解してもらうのではなく、あなた自身の人間性を評価してもらうことが大事だと思います。

貯金どころではない?納棺師がお金の貯まらない職業な理由

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納棺師の給料

納棺師の年収はおよそ300万円。
給料額面25万円、税金を引かれたあとの手取りにすると21万円。
湯灌・納棺の専門業者に就職した場合の一般的な金額です。 この金額に背中を押されて、大変そうだけど納棺師になってみようかなと思われた人向けに少々酷ではありますが、思った以上にお金は貯まりませんよという記事を書いていきます。
今回はボーナスを計算にいれませんでしたが、基本給1ヶ月分×年2回といったところでしょう。
少なってか?こんなもんです。

お金を使う機会が多い

納棺師の給料について書いているサイトをよく見かけるのですが、お金を使う機会が多いってことを書いてやらなきゃ不親切だろうと常々思っていました。
とにかく稼ぎたいんだというのが納棺師になるキッカケって人が大多数だと思うんですよね。 まずは、お金を使ってしまう理由から。

コンビニでトイレを借りる

朝、事務所を出発したら大抵は夕方まで帰ってくることはありません。
必然的にトイレは公衆トイレやコンビニのトイレを借りることになります。
何も買わないのにコンビニのトイレを借りることについての是非は今回スルーしますが、トイレを借りて何も買わずに出てこられますか?ってことです。
飲み物を買ったり、眠気覚ましにガムを買ったりせずに出てくる自信はありますか?
一日に2、3回、積り積もれば大きい金額になるんですよ、それが。
私は何も買わず出てこられるタイプですが、それでも300円×23日=約6900円
何か買わなきゃ申し訳ないと思うタイプの人はもっと使ってましたね。
中にはコンビニに入ると買わずにはいられないタイプの人もいましたよ、マジで。
欲しいものを探してまで買うなと何度注意したことか。

時間に余裕がある

納棺師は葬儀社の依頼を受けて、ご自宅や会館に向かいます。
事務所を中心に100km位が仕事範囲ですので、行きたいなと思っていた場所や街に行くこともよくあります。
それゆえに、ちょっと休憩で立ち寄った道の駅でお買い物しちゃったり、あ、ここの店有名なのよね~っておまんじゅう買っちゃったり、キャこれ安いわ~て、またまたおまんじゅう買っちゃったり。
(おまんじゅうばっかりやん言うな、好きなんやから。)
数百円の積み重ね、結構大きい金額なりますよ。
あなたはグッと我慢できますか?
珍しいものを見つけると、子どもの分まで買ってる人もいました、なんのために仕事してるのかわかんないわとか言いながら。
ちなみに私は月に5000円位使ってました。

二人一組の仕事

お昼ごはんは家からおにぎりを持ってくる人が多いです。
仕事は当日の朝に割り振られるので、いつ、どこで食べられるかわからないからね。
ただ時間に余裕があると、外食しようか!となることも多いのです。
そんな時、私、おにぎり持ってますから(キッパリ)と断れますか?ってこと。
ケチくさいと思われはしないか、付き合いが悪いと思われやしないか、先輩が言ってるんだから断り辛い、そもそも外食好きだし、せっかくココまで来たんだからえ~い外食しちゃおぅみたいなことになるんです。
車中で二人でおにぎり頬張ってるより、そりゃ良いわな。
二人一組で動くので協調性も必要、付き合いも大事。
私は案外断るのが苦にならなかったとはゆえ、月に5000円位は使っていたはずです。

お金のコントロールが出来ますか?

お金を使う機会が多い理由、おわかり頂けたでしょうか?
お金のコントロールが出来るという人にとっても、一時の衝動を我慢する回数が多いということがストレスになりかねないことだけは心に留めておいてくださいね。
私の場合ザックリ計算しただけでも16900円使ってましたが、これはストレスをためない程度にコントロールした金額ですので参考になれば。 お金のコントロールが苦手な人にとっては最悪の環境だと言えるでしょう。
でも、納棺師になりたいんだ!もうこの仕事しかないんだ!という人は次の解決のヒントを読んでみてください。

解決のヒント

私は今までに40人超のスタッフと仕事をしてきましたが、その中でストレスをためずお金のコントロールが出来ていた人は6人だけです。そのうちの3人を紹介します。

50代前半男性
口癖は「老後が心配」、貯金とFXが趣味。お店のポイントカードや無料クーポンを使いこなすことを得意とする。 この人が成功している理由は、なりふりかまわず節約しているところ。そして本人もそれを楽しみ、貯金という目標を達成している点がポイント。
皆から「あの人はお金を絶対使わない」と思われているので、外食に誘われたりしない。むしろガム一つでも買おうとしているところを見つけられると「ムダ使いダメだよ」と言われる。
周りを巻き込み節約に勤しむ。

30代女性
体型ポッチャリ、外食大好きの大飯食らい。ドクターから痩せるように言われたのをキッカケにダイエットを始める。自分のスリーサイズを惜しげもなく公表し、生活習慣を変えカロリー計算しながらの食事に変える。
この人が成功している理由は、周りを応援者に変えたところ。ダイエットと節約を同時に達成し、現在は筋トレに励みつつ節約継続中らしい。お腹が減ったら鶏胸サラダ、喉が渇いたらプロテインみたいな。

30代男性
口癖は「嫁さん怖い」、毎月のこづかいは定額制。家計を助けるために奥様もパートをされているのだとか。怖い怖いと言いながらも、家事、育児、仕事をこなす奥様に感謝しているところを垣間見る。
この人が成功している理由は、周りの協力を得ているところ。それとなくお金を使わなくて済むようなルート取りを提案されているところをよく見かけたもんよ。
こういう人はどんな状況であれお金のコントロールが出来る人だと思いますが、ストレスなく続けられるのは周りの協力のお陰だと思うんですよね。ポイントは人柄ってことかな。

解決のヒントになったでしょうか?共通する点は周りをうまく巻き込むこと。目標を持って節約をすることと言えるのではないでしょうか。
さあ、あなたはそれでも納棺師になりたいですか?